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EMConf登壇 | 自立型組織の真実。甘い自走を捨てて導いた、EMによる戦略的組織変革

EMConf登壇 | 自立型組織の真実。甘い自走を捨てて導いた、EMによる戦略的組織変革

# 設計# AI
佐野 雅保
2026/03/05公開2026/08/15更新

こんにちは。ディップ株式会社でエンジニアリングマネージャーをしている佐野です。
今回はEMConf2026にて登壇してきたので、その内容を残しておこうと思います。


エンジニア組織の話になると、よくこんな言葉を聞きます。

  • 自律型組織
  • 自走するチーム
  • フラットな組織

どれも魅力的な言葉です。

しかし、私はこの理想をそのまま信じた結果、組織を崩壊寸前まで追い込んだ経験があります。この記事では、

  • 自律型組織の「よくある誤解」
  • 実際に起きた失敗
  • そこからどう組織を立て直したか

を、実体験ベースで紹介します。


自律型組織の落とし穴

「メンバーを信じて任せる」

マネージャーとして理想的に聞こえる言葉です。
しかし、この言葉をそのまま実行すると、多くの場合組織はうまく回りません。

理由はシンプルです。

自律と自由を履き違えるからです。
自由すぎる環境では、メンバーはそれぞれの判断で動きます。
すると特定の領域に負荷が集中し、組織全体の動きはむしろ遅くなります。


アジリティのパラドックス

この状況は、次の言葉でよく説明されます。

自由すぎるハイウェイは、最も悲惨な渋滞を引き起こす

開発スピードを上げるために「自律」や「自由」を与えた結果、逆に組織が動けなくなる。
これが アジリティのパラドックスです。


私の組織で起きたこと

私の組織でも、同じことが起きました。

  • 生産性の低下
  • チームの士気低下
  • 技術的負債の増大

そして最終的には事業のスピードまで落とす状態になりました。

原因は明確でした。

私が「甘い自走」を許していたことです。


「自走」という名のマネジメント放棄

言葉を選ばずに言えば、「自走」という名のマネジメントの放棄でした。
枠組みのない自由は、カオスを生みます。

その結果、

  • リードタイムが長くなる
  • デプロイが怖くなる
  • 開発コストが膨らむ

といった問題が起きます。

つまり「甘い自走」は事業にとっての負債になります。


自律 ≠ 自由

ここで重要なのが次の考え方です。自律と自由は同じではありません。

自由とは制約がない状態。
自律とは自らルールに従う状態です。

つまり自律とは「境界線(ガードレール)」と「責任」のセットなのです。


組織を変えるセンターピンは「意思決定」

組織を改善しようとすると、多くの場合次のような施策が検討されます。

  • 評価制度
  • 1on1
  • パーパス浸透
  • 組織憲章

しかしカオスな組織にこれを一気に入れると、逆に組織は崩れます。

重要なのは一番レバレッジの効くポイントから変えることです。
私が選んだのは意思決定(Decision)でした。


信号機プロトコル

そこで導入したのがTraffic Light Protocol(信号機プロトコル)です。
すべての判断を、次の3つに分類します。


RED(承認)

事業影響が大きい判断

  • ロードマップ変更
  • 優先度判断

EMの承認が必要


YELLOW(相談)

影響が中程度の判断

  • ミドルウェア更新
  • DB変更

Tech Leadと合意


GREEN(報告)

影響が小さい判断

  • ライブラリ更新
  • 軽微なUI改善

現場が即実行


なぜ意思決定から変えるのか

意思決定を整理すると、組織の多くの問題が同時に解決し始めます。

  • 止まる場所が明確になる
  • EMの負荷が下がる
  • 現場が自分で決められる

つまり
心理的安全性が生まれます。


組織に起きた変化

信号機プロトコル導入後、組織には次の変化が起きました。

リードタイム短縮

日常タスクの約80%が
GREEN判断で即実行可能に。

技術的負債の改善

リファクタリングがGREEN扱いとなり
現場主導の改善が進みました。


構造変革の成果

以前の組織では

  • トラブル対応
  • 管理作業

60%の時間が消えていました。
しかし現在は攻めの開発(新機能・R&D)の割合が20% → 40%に増えています。

そしてEMは未来の戦略に集中できるようになりました。

自ら決めて、戦略練って、組織全体の成果へと繋げる

まさに、自律的な組織への進化です


まとめ

組織改革は難しく見えます。しかし最初の一歩はシンプルです。

判断を構造に落とすこと。

まず1つの判断について

  • 赤信号(止まる)
  • 青信号(進む)

を決めるだけで、組織は動き始めます。

EMConf会場にてお聞きいただいた方、ありがとうございました。

登壇を通じ、理想と現実の差を直視し、意思決定の構造化の重要性をあらためて痛感。明日からの現場でも更なる一歩を積み重ねます。現場の自律を支えるガードレールづくりを、仲間と愚直に磨き続けましょう!

執筆者

佐野 雅保

佐野 雅保

# EM

異業種を数年経験後、2003年にITへ転身。Java開発、IT営業、PjM、開発ディレクター、部門長を歴任。2015年以降はアジャイル推進に注力し、マネージャーとして組織を牽引。自律自走型チームづくりとプロジェクト推進に貢献。現在は「SoE」領域を担う開発組織のEMとして、アウトプット最大化と人材育成・組織開発を推進。週末はアマプラとビールに溺れてます。