はじめに
初めまして!愛知工業大学 情報科学部 3年の提髪沙奈(さげがみ さな)です。普段はWebフロントエンドの開発を中心に、ハッカソンやチーム開発によく参加しています。
2026年9月7日から9月11日までの1週間、dipのインターンシップに参加し、求人情報サイト「バイトル」のWebフロントエンド開発に携わりました。
この1週間、実務コードの修正からUI改善、さらにAIエージェントを活用した機能の企画提案まで、かなり濃い時間を過ごさせていただきました。この記事では、ハッカソンや学生チーム開発とは違う本番サービスをチームで運用・改善していく現場で学んだことを記したいと思います。
インターンでの目標と理想のエンジニア像
インターンシップの開始にあたり、毎日の日報の中でも意識していた「理想のエンジニア像」と今回の目標を設定しました。
- 理想のエンジニア像(VISION):その機能が誰の何を解決するのかを自分で確かめ、より良い体験になる形を提案できるエンジニアになりたい。
- 原体験(Why So):不特定多数向けのアプリ開発や、商店のレジシステムといった身近なコミュニティ向けの開発を通して、相手の生の反応を見ながら改善を繰り返すことにやりがいを感じてきたから。
- 今回の目標:フリーワード検索やAIエージェントの改善提案と実装に挑戦しつつ、実際の開発チームがどうプロダクトを動かしているのか、現場の雰囲気を知る。
単にアサインされたタスクを消化するだけではなく、「なぜこの機能を作るのか」「使うユーザーにとってどうなのか」という根本の問い(Why)を明確にし、提案まで行うことを1週間のゴールに置きました。
取り組んだこと
5日間という限られた時間の中で、主に以下の課題に取り組みました。
1. 掲載終了案件への電話応募エラーログ対応
最初にアサインされたのは、掲載が終了した求人にユーザーが電話応募しようとした際、システムが不要なエラーログを出してしまう問題の修正でした。本当のシステムエラーと「掲載終了による応募不可」がログ上で区別できない状態になっていたためです。
バックエンド側は「電話応募のリクエストを受領した」という意味で 202 Accepted を返す設計になっていました。しかし、ユーザーが使うWebフロントエンドの視点では、掲載終了により「応募が不成立で完了した状態」です。バックエンドのステータスをそのままクライアントに返すのではなく、Web側で「掲載状態と矛盾している(応募不可)」を示す 409 Conflict に適切に変換し、正常な応募不可処理としてエラーログから除外するよう修正しました。
ただ受け取った値を右から左へ受け渡すのではなく、「今どういう状態なのか」「どのレスポンスが意味的に正しいのか」を突き詰めて実装する重要性を実感しました。
2. dipAI Agentバナー追加と、他部署連携によるトラッキング設計
仕事一覧へのdipAI Agentバナー追加と、ユーザーが検索した結果が0件だったときにそのまま離脱してしまうのを防ぐため、dipAI Agentへ相談を促すバナーを設置しました。また、自分から「0件の画面にもバナーを置くのはどうか」と提案し、追加の実装につながったタスクです。
ここでは画面にバナーを置くだけでなく、マーケティング施策として「バナーがどれくらい押されたか」を測定するためのトラッキング(イベント計測)を設定しました。正しくデータを取得できるよう、PO(プロダクトオーナー)担当の方や計測担当の方、メンターの方に連絡を取り、イベント名の命名規則などの調整を行いました。
3. 「フリーワード検索×dipAI Agent」の改善案づくりとPOの方への提案
「フリーワード検索が少し使いづらい」という課題感に対し、「テキストを入力するフリーワード検索とdipAI Agentは親和性が高いのではないか」と意見をもらい、検索候補の最下部から入力中の条件を引き継いでdipAI Agentに相談できる導線を企画し、提案書を作成しました。
これまで誰か一人の責任者やPOの方に対して自分一人で直接提案を持ちかける経験がなかったため、まずは提案の機会をいただき直接相談させていただけたこと自体が非常に貴重な経験となりました。提案作成にあたってはJiraで背景や目的を整理し、提案を持ちかけてフィードバックをいただきました。
POの方々からは、以下のようなフィードバックをいただきました。
「条件が明確に決まっているユーザーには、AIへ誘導するよりも検索条件自体を使いやすくする方が親和性が高いのでは?」
「逆に『どう検索したらいいかわからない』と悩んでいるユーザーこそ、AIでの条件整理が活きるのではないか?」
このやりとりを通じて、自分自身に近いペルソナ(検索や条件整理に慣れているユーザー)を前提に企画を考えてしまっていたことに気づきました。バイトルを利用する多くのユーザーの中には、「どう検索していいか分からない」と困っている方もいます。誘導先であるdipAI Agentが本当に救うべきペルソナは誰なのか、ユーザーの背景を多角的に考慮する視点が不足していたと実感しました。
単にAIの利用数を増やすことではなく、「ユーザーが自分に合った求人に早く出会えるか」「検索から詳細閲覧までの時間を短縮できるか」という本質的な価値(UX)を軸に考える大切さを学びました。自分から主体的に提案を組み立て、直接レビューをいただくプロセスをやりきれたことは、今回のインターンにおける大きな成長だと感じています。
4. 画面の違和感相談と、スマホ実機での表示調整
並行して、以下のような実務的なUI・UX改善も行いました。
- 都道府県選択モーダル:背景タップで閉じないよう変更し、選択が必須だとわかる案内文へ修正。
- SP(スマホ)でのキーボード表示挙動:キーボードが出た際に背景画面がスクロールしてしまう不具合を修正。実機検証が必要だったため、メンターさんの社用スマホをお借りして動作確認を行いました。
- Chipコンポーネントの修正:押下時のスタイル(
state: pressed)追加と、不要なアニメーションの削除。
開発中、フリーワード検索バーのフォントに少し違和感を持ち、デザイナーさんに「ここはこれで合っていますか?」と相談してみました。結果としてその部分の変更は見送られたのですが、そのやりとりをきっかけにデザイナーさんが感じていた別の懸念点を聞くことができ、メンターさんを交えた新しい改善の議論に発展しました。致命的なバグでなくても、感じた違和感を恐れずに言葉にすることでチームの改善につながるのだと実感しました。
気づき・学び
実務での開発を通して特に強く感じたのは、ただコードを書くだけがエンジニアの仕事ではないということでした。
バックエンドが「非同期リクエストを受理した」という意味で返しているコードと、Webフロントエンドがユーザーやブラウザに対して表現すべき状態は必ずしも一致しないと学びました。双方のシステムの役割やプロトコル上の意味、そしてエラーログ監視への影響まで考慮して、フロントエンド側で最適なレスポンスコードへ変換・制御することの大切さを実感しました。
また、画面の見た目を作って完了するのではなく、施策効果を測るためのトラッキング設定を行ったり、それに伴って他部署との調整を進めたりする部分までが開発作業に含まれると知りました。一人で抱え込んで実装するのではなく、途中で気づいた小さな違和感や疑問をすぐにデザイナーやメンターに相談し、チーム全体で議論を広げる大切さも学びました。
提案書の作成においても大きな学びがありました。フリーワード検索の改善案をまとめていた際、CTO室の方に「忙しい相手に提案を通すコツ」を相談する機会がありました。そこで教えていただいたのは、「忙しい読み手の時間を取らせないよう、結論と背景を整理し、出戻りがない形にしてから渡す」ということです。最近はAIを使って資料の初期案を作ることも増えましたが、最終的に読む相手の視点に立って文章や構成を整理し直すことの大切さを実感しました。
そして、技術面や業務面だけでなく、社内の温かい雰囲気や人とのつながりも非常に印象的でした。業務中もデイリーミーティングやスプリント振り返り、FigJamを使ったKPT(Keep / Problem / Try)などでフランクに意見を掛け合っていましたが、その背景には日頃のコミュニケーションがあるのだと知りました。4日目の夜にはボードゲーム会に参加させていただき、初対面の私に対してもみなさんとてもフランクに接してくださり、「ito」や「ヘルパゴス」といったゲームを一緒に行いました。こうした部署を超えた交流の機会が定期的にあるからこそ、業務での相談しやすさやチームとしての良い関係性が生まれているのだと感じました。
結果
1日目から5日目まで走り抜けた結果、最初に定めた目標に対して以下のような成果を得ることができました。
- エラーログの削減と監視改善:電話応募のステータスコード変更(202→409)により、実際の応募数や発生率は変わらないまま、これまで不要に発生していたアラート対象のエラーログをなくすことができました。これにより、「掲載終了による応募不可」というシステムとして想定内の挙動がログのノイズにならなくなり、開発・運用チームが本当に対応・調査すべき重要エラーに注力できる環境を作ることができました。修正後にダッシュボードを確認し、不成立の事象自体は発生しつつもアラート対象エラーが減っているのを見たときは、自分の実装が意図通り機能しサービスに貢献できていることを実感できて嬉しかったです。
- 提案とフィードバックを通じたUXの深掘り:フリーワード検索×dipAI Agentの提案を通じて、POの方へ直接提案を持ちかける経験ができました。自分自身の無意識な思い込みに気づき、「どんなユーザーのどんな困りごとを解決するのか」という視点で深い議論を重ね、エンジニアとして大きな成長を実感できました。
- 主体的なコミュニケーション:0件時のバナー設置の提案、他部署とのトラッキング連携、デザイナーへの違和感の相談など、指示を待つだけでなく自分から動くことができました。
おわりに
この1週間は、単にコードを書くだけではなく、「誰の何を解決するのか」という根本のWhyを考え続けた5日間でした。
インターン開始前の面談から「やってみたいことはある?」と親身に聞いてくださり、学生がやってみたい企画やタスクに挑戦させてくれたチームの環境が本当にありがたかったです。
コードを増やすことだけが成果ではなく、不要な実装を削ったり、マーケティング視点を取り入れたり、小さな違和感を周囲に相談してチームで良い形を探ったりすることが、プロダクトの価値を高めるのだと知りました。
今回のインターンで得た「ユーザー目線で本質を突き詰める姿勢」と「相手を意識したコミュニケーション」を、今後の開発やキャリアにも生かしていきます。温かくサポートしてくださったメンター、バイトルWeb開発課の皆様、本当にありがとうございました!

