はじめに
ディップ株式会社のデザインセンター コーポレートデザイン課の井桁です。
2026年4月、私たちは外部のデザイナー、Yuriaさんをお招きし、デザインの「プロとしての基準値」を学ぶ講演・ワークショップを企画しました。この記事では、なぜコーポレートデザイン課がこのような会を開いたのか、そしてこの活動を通じてどんな組織を目指しているのか、を中心にお伝えします。
なぜ、今この活動が必要だったのか
きっかけは、組織として抱えていた課題に正直に向き合ったことでした。
私たちのチームには、「なんとなく良さそう」でデザインを提案してしまうことがある、という現実がありました。色、フォント、レイアウト、余白。それぞれに判断の根拠はあるはずなのに、言葉にできない。だから修正の指摘を受けても、何がどう違うのか自分では説明できず、同じ出し戻しを繰り返してしまう。
この状態が続くと、デザイナーとして成長の機会も生まれにくくなります。目指すべきプロの基準が曖昧なまま、現状のスキルに満足してしまい、自発的にインプットをしようという意欲も薄れていく。そのような危機感が、チームの中で積み重なっていました。
課題を整理すると、大きく3つに絞られました。目指すべきロールモデルがいないこと、デザインの判断を言語化する力が身についていないこと、そして変わらなければという危機感が足りないこと、です。
「感覚」から「根拠」へ
この課題に対して、私たちが目指したのは3つのことでした。
まず、プロの圧倒的な思考量に触れ、「今のままでは通用しない」と自分ごととして感じる危機感の醸成。次に、細部までこだわる微調整やボツ案の裏側まで知り、制作の基準値を引き上げる「解像度」の向上。そして、良いデザインとは何かを理解し、AIを使ったデザイン制作のレベルを上げていく「審美眼」の育成。
これらを一度のインプットで終わらせずに、日々の業務に根づかせていく。それが、この活動全体のゴールです。
なぜ、外部デザイナーを招く形を選んだのか
内部でのノウハウ共有ではなく、外部から第一線で活躍するデザイナーをお招きする形を選んだのには理由があります。
今回ご登壇いただいたYuriaさんは、著名なデザイン案件を数多く手掛けるトップクリエイターです。Yuriaさんの最大の特徴は、完成品だけでなく、そこに至るまでの「泥臭いプロセス」を言語化できる稀有な存在だということです。ボツ案をどれだけ量産したか、「なぜこのフォントか」「なぜここを空けるか」という問いに論理的に答えられるか。そういった部分が、私たちには足りていないと感じていました。
社内でもデザインの知識を持つ人はいますが、「プロとしての基準値に触れる衝撃」は、外部から届けてもらうものがあると判断しました。自分たちの当たり前を揺さぶってくれる存在に来ていただくことで、初めて「今のままではいけない」という危機感が生まれると考えたからです。

講義・ 公表の2日間
講演を「聞いて終わり」にしないため、今回のイベントは2日構成になっています。
Day1は講義です。Yuriaさんからプロの視点と基準値を提示してもらい、まず「衝撃と危機感」を受け取る場にしました。Day1だけでは知識はインプットできても、自分のスキルには変わりません。
そこで、Day1とDay2の間に2週間の制作期間を設けています。Day1で受け取った基準をもとに、自力で課題に取り組む時間です。ここが最も重要なプロセスで、頭で理解したことを手を動かして体に染み込ませていく期間になります。
Day2は講評です。Yuriaさんからフィードバックを受け、ライブ修正を通じて「差の体感」をする場です。フィードバックの観点はクオリティだけでなく、アイデアの出し方や着地方法にも重点を置いています。
そして、この活動の「お土産」として目指しているのが「デザインを言語化するための共通ドキュメント」の作成です。チームの誰が担当しても同じレベルでデザインの意図を言語化できるテンプレートやガイドラインを、ワークショップを通じて一緒に構築していきます。このドキュメントが完成することが、今回の活動の最終成果です。


どんな組織を目指しているのか
今回の活動は、スキルアップのイベントという位置づけにとどまりません。
私たちが目指しているのは、デザインの判断を言語化できるチームです。「なんとなく良い」ではなく、「なぜこうするのか」を論理的に語れるデザイナーが集まった組織です。それは、依頼者やチームメンバーへの説明力を高めるだけでなく、フィードバックを受けたときの吸収力も変えていきます。
また、感覚に頼らずに言語化できるようになることは、AIを活用したデザイン制作との相性も良くなっていきます。「指示の質」がアウトプットの質に直結するAI活用においては、自分のデザインの意図を言葉にできるかどうかが大きな差を生みます。
このような活動を継続的に行い、プロとしての基準値を組織の中に根づかせていく。コーポレートデザイン課がそういった組織になっていけるよう、今回の試みを第一歩にしたいと考えています。
まとめ
外部デザイナー招聘による講演・ワークショップは、チームの課題に正直に向き合うところから始まりました。「なんとなく」のデザインを卒業し、根拠を持って語れるチームを作るために、衝撃を届けてくれる外部の視点を取り入れることを選択しました。
2日間の設計、制作課題、共通ドキュメントの作成というサイクルを通じて、学びを日々の業務に定着させていく。この活動が積み重なって、コーポレートデザイン課の「基準値」が上がっていくことを目指しています。
講師YuriaさんのHPはこちら
https://leirion.jp/15e9c580525c04


