こんにちは。ディップ株式会社のDevRelです。
私たちは2026年、ゴールドスポンサーとしてTSKaigi 2026に参加しました。この記事では、私たちが「なぜスポンサーしたのか」「どんな課題に対して、どう設計したのか」「実際に何が起きたのか」を順番にお伝えします。これから初めてスポンサーシップを検討する方が、自社の設計に持ち帰れる形にまとめました。
この記事は、こんな方に向けて書いています
- 自社の技術カンファレンスへのスポンサーシップを、これから検討する立場にある方
- スポンサーになることは決まったけれど、ブースやセッションで何をすべきか悩んでいる方
- 出展の効果を、感覚論ではなく数字や設計思想として社内に説明したい方
今回のスポンサーシップの目的
私たちが今回のスポンサーシップで掲げた目的は、大きく2つです。
①技術知見の還元
20年以上運用されているサービスをTypeScriptへ本格的に移行している例は、国内でも多くありません。その過程で得た知見をコミュニティに返すことは、これからの日本のフロントエンドを支える技術者を育てる土台に参加することだと考えました。
②フロントエンド組織のレバレッジ
社内エンジニアが自分の技術と言語化能力を社外にぶつけ、視座を育てることを、組織開発の一歩として位置づけました。
私たちが置かれていたフェーズと課題
ディップが運営するアルバイト求人サービス「バイトル」は、20年以上の歴史を持つ国内最大級のプロダクトです。私たちは今、その大規模リニューアルの中核として、フロントエンドのTypeScript全面刷新に取り組んでいます。20年運用されてきたサービスをTypeScriptへ本格移行する例は国内でも少なく、参考にできる知見が少ない領域に踏み込んでいる状況でした。
組織としては、「技術に強いフロントエンドエンジニアを各開発チームに1人ずつ配置し、組織全体を自律的に強くする」という構造を目指しているフェーズにあり、そのためには社内エンジニアが社外で自分の技術や言語化能力を試す経験が必要だという課題意識を持っていました。
今回のスポンサーシップ設計の出発点になったのは、次の2つの課題です。
- 前例の少ない技術的な複雑さに、自分たちの知見で向き合う必要があったこと
- 技術に強い人材を、各チームに配置できるレベルまで育てていく必要があったこと
解決策:セッションで採用広報、ブースで技術広報
この2つの課題に対して、私たちはスポンサーセッションとスポンサーブースの役割を完全に分けることを解決策にしました。
施策 | 主な目的(ターゲットのニーズ) | 設計思想 |
スポンサーセッション | 採用広報(潜在的な転職層のニーズ) | 向き合う技術的難易度と、エンジニアとしてのキャリアの魅力を伝える |
スポンサーブース | 技術広報(現役エンジニアの技術的ニーズ) | 現場の課題や楽しさを共有し、純粋な技術的交流を生む |
セッションは「会社の外に向けて、キャリアの魅力を伝える場」、ブースは「現場のエンジニアの本音を聴く場」と役割を分けたことで、それぞれの施策が何を狙っているのかが社内でもブレなくなりました。
セッションの結果:技術的な難しさを正直に語ったら、ブースへの動線になった
スポンサーセッションでは、テックリードの横山が登壇しました。「『バイトル』のTypeScriptリニューアル 積み上がったレガシーとパフォーマンスに挑む現在地」というテーマで、20年超の歴史を持つ求人メディア特有の複雑性と、パフォーマンス改善の泥臭い現実、これからの挑戦を等身大で語りました。
結果、会場はほぼ満席になりました。セッション直後に「詳しく話を聞きたい」とブースへ直行してくれるエンジニアも多く、技術的な難しさを正直に語ったことがポテンシャル層の興味を引き、ブースへの動線として機能しました。

214名との対話で見えた、エンジニアのリアルな葛藤
ブースでは、技術広報を中心に設計し、来場者に「TypeScriptの楽しいこと・大変なこと」をポストイットに書いてホワイトボードに貼ってもらう体験型企画を実施。2日間でなんと214名ものエンジニアがブースを訪れてくれました!

ブース来場者の内訳
- 1〜3年目:38%(84名)
- 4〜10年目:46%(100名)
- 11年目以上:16%(35名)
全層に共通していたのは、AI活用に関する両義的な感情です。開発効率化への期待と、レビュー負荷の増大への不安が同時に語られていました。一方で、層ごとに異なる悩みも見えてきました。
経験年数別の苦悩と喜び
- 1〜3年目(若手層):AIが生成したデザインやコードの手直し、複雑化する状態管理、レガシーシステムとの接続
- 4〜10年目(中堅層):「開発スピード vs 技術負債」の板挟み、ドキュメントのない暗黙知ドメインの解読、技術投資のROI算出の難しさ
- 11年目以上(シニア層):過去に作られた独自ライブラリの保守、組織文化の変更・マインドセットの変革、既存仕様(複雑怪奇なビジネスロジック)の変更ハードルの高さ
他社のシニア層やマネージャー層が抱える「組織文化の変革」や「ROI算出」という悩みは、まさに私たちディップが今向き合っている壁そのものであり、非常に解像度の高いディスカッションを行う基準となりました。


そこから得られた示唆:TSKaigiが有意義だった理由
ここまでの結果を踏まえて、私たちは3つの示唆を得ました。
①目的を分けたことで、社外への発信と社内の言語化が同時に進んだ
セッションとブースの役割を分けたからこそ、若手・新卒メンバーは社外への説明を通じてアウトプット力を伸ばし、テックリード・マネージャー層は「これからどんな組織にしたいか」「何が足りていないか」を言語化する機会を得ました。
②ブースを「聴く場」として設計したことで、自社を客観的に振り返る基準が手に入った
他社のエンジニアが何に悩み、何を楽しんでいるかをリアルに聴けたことで、「ディップではどうなのか」を見つめ直すきっかけになりました。
③技術的な難しさを正直に語ったセッションが、採用広報としても機能した
きれいな成功談より、向き合っている課題を等身大で語る方が、ポテンシャル層の興味を引くという実感を持てました。
これから初めてスポンサーシップを検討する方には、次の3点を持ち帰っていただけたら嬉しいです。
- 目的を最初に2つに分けておくこと
- ブースを発信の場ではなく聴く場として設計すること
- 出展を社内の言語化・育成機会として位置づけること
おわりに
TSKaigi 2026での2日間は、私たちにとって「スポンサーをやってよかった」と心から思える経験になりました。ブースで本音を聞かせてくれた214名のエンジニアの方々、満席の会場で横山の話に耳を傾けてくださった皆様、そして運営の皆様に、この場を借りてお礼を伝えたいです。
「バイトル」のTypeScriptリニューアルは、まだ道半ばです。私たちはこれからも、その過程で得た知見をコミュニティに返しながら、技術に強いフロントエンド組織をつくっていきます。これから技術カンファレンスへのスポンサーシップを検討する方にとって、この記事が設計のヒントになれば嬉しいです。




